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校務の情報化推進セミナー2013 大阪会場 セミナーレポート
2014年1月18日(土)大阪府大阪市・梅田スカイビルにて「校務の情報化推進セミナー」が開催されました。県内外から87名の先生方の参加がありました。
趣旨説明
講師
堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
堀田先生から本セミナーの趣旨説明がありました。
はじめに、文部科学省が毎年行っている学校における教育の情報化に関する調査結果から、関西地区の校務用コンピュータ整備率や校務支援システムの導入率を確認しました。
堀田先生から本セミナーのポイントが挙げられ、「校務の情報化によって業務の軽減をすれば、子どもたちのための時間が増え、より本質的な方に使う時間の割合が増えます。そして児童生徒の教育の質の向上と、それに伴う学校経営の改善につながるのです。本セミナーで理念だけでなく具体的な情報を得て、それらを参考に導入戦略などを考えていただきたい」と、お話がありました。
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操作体験
進行
鈴木真理(スズキ教育ソフト株式会社 インストラクター)
尾藤唯(スズキ教育ソフト株式会社 インストラクター)
受講者が2人1組となって、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の操作体験を行いました。
インストラクターの進行に合わせて、名簿から指導要録の作成に至るまで、「1年間の校務」における主な操作を体験しました。中でも、出席簿や成績処理に入力されている情報を読み込むなど、通知表の入力を手助けする機能の説明では、あっという間に転記されるのを見て、驚きの声が上がりました。校務支援システムの便利さや細やかな配慮に笑顔になる受講者も多く見受けられました。
一連の操作を通して、一つのデータを様々なところで利用・転用できることに、受講者は「校務の情報化の良さ」を実感していたように見えました。
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分科会
分科会は、4つのコースに分かれて行いました。分科会は少人数で、受講者同志のディスカッションも交えながら進められました。
●コースA-1:小学校での活用
講師
新保元康(札幌市立幌西小学校 校長)
塩津昭弘(熊本市立画図小学校 校長)
講師の先生から、校務の情報化を進めるための取り組みについて発表していただきました。
塩津先生からは、校務支援システムの導入に向けた取り組みについてお話がありました。校長会として方針を検討したり、教師や保護者へのアンケートを実施したりしながら、校務の情報化の第一歩として、通知表の電子化を進めたそうです。「戦略的・組織的・計画的に進めることが、開かれた学校づくりにつながっていく」とお話がありました。
新保先生からは、校務支援システムを生かすための運用の工夫についてお話がありました。システムの導入にあたって、出席簿を入力する担当を変えたり、通知表の渡し方を変えたりしたそうです。「ICTは魔法でも無能でもない。ICTを使うにあたって業務フローの見直しや業務削減をすることで、効率的・効果的な学校運営ができます」とお話がありました。
グループに分かれての意見交換も行われ、受講者からは「他の自治体の状況を知り、ヒントを得ることができた」との声がありました。
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●コースA-2:小学校での活用
講師
新谷裕幸(柳川市立豊原小学校 校長)
江口浩文(佐賀市立西与賀小学校 校長)
講師の先生から、校務支援システムの導入から普及に至るまでの計画や取り組みについて発表していただきました。
江口先生からは、校務の情報化に対する不安への対応や校務の情報化の効果についてお話がありました。校務支援システムの導入にあたって、職員やPTAへ校務の情報化の目的やメリットを説明して、理解を得ていったそうです。情報化については「デジタルに任せ、効率化できるところは、思い切ってデジタル化していく。一方、アナログでしかできない心の教育などは、アナログで…。使う方が、取捨選択し、意図、計画性をもって活用することが大切です」とお話がありました。
新谷先生からは、市全体で校務の情報化を推進するための取り組みについてお話がありました。新谷先生が中心となって、システムで印刷したものが公簿として認められるように調整したり、他の学校の校務支援システムの研修をサポートしたりしているそうです。校長自らが率先して指揮をとり、リーダーシップを持って積極的に学校や自治体に働きかけて情報化を進めていく姿を示されていました。
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●コースB:中学校での活用
講師
金俊次(米沢市立東部小学校 校長)
延堂雅弘(岡山市立旭竜小学校 校長)
講師の先生から、「校務の情報化」に関する学校の取り組みについて発表していただきました。
延堂先生からは、校務支援システムの導入についてお話がありました。「何のために校務支援システムを入れるのかということを、先生方に明確に説明し、省けることやパソコンにさせればよいことなどを、しっかり見直して情報化を進めていくことが大切です」とお話がありました。
金先生からは、校務の情報化の効果についてお話がありました。校務の情報化を行うことによって、リアルタイムで学校全体の状況を掴むことができたり、保護者からの信頼を高める通知表作りにも繋がったりしたそうです。「管理職として日々の状況をつかむツールは、学校マネジメントにとても大切なことです」とお話がありました。
受講者が学校で直面する課題について話し合う時間も取られ、具体的にどのように働きかけていけば良いのか、お互いに意見交換をする姿も見受けられました。
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●コースC:教育委員会としての導入
講師
山本朋弘(熊本県教育庁教育政策課 指導主事)
高橋伸明(笠岡市教育委員会学校教育課 統括)
片山淳一(岡山県総合教育センター情報教育部 指導主事)
山本先生が司会者となって、各地域の校務の情報化の現状、校務支援システムの導入に向けての疑問点や課題について、受講者からも出していただきながら、分科会を行いました。
高橋先生からは、笠岡市で校務支援システムを導入した事例について発表がありました。「システムを適正に活用するためには、すべての先生が活用イメージを持つことができる教員研修の実施を、導入とセットで考えることが不可欠」とお話がありました。
片山先生からは、教育センターが実施する研修について紹介がありました。「段階的な研修が大切であり、運用ルールや業務フローの効率化について意見交流が行われるような研修が望ましい」とお話がありました。
受講者からは、システム導入におけるメリット・デメリット、カスタマイズについての質問があり、情報共有・集約の場として充実した時間となりました。
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総括講演
講師
堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
堀田先生から、校務の情報化を有効に生かす学校経営についてお話がありました。
「校務の情報化により、先生は子どもと向き合う時間が増え、蓄積された様々なデータをもとに質の高い授業やエビデンスに基づいた指導ができるようになります。また経営者の立場としては、状況をリアルタイムで把握することによって、先回りの判断が可能になります。学校の経営ビジョンから見て、情報を集約し、どのように連携されていくべきかということを助けてくれる、組織としての校務を支援してくれるシステムなのです」と堀田先生。
「校務支援システムの導入は、教師という専門職、学校という専門機関が目的を達成するためにあくまでも環境を整備しただけであって、運用の研究をしないと学校経営は改善しません。だからシステムの操作ではなく、他の導入している地域・学校との情報交換こそが研修の内容であるべきです。いい学校を評価して、テンプレート化するだけでなく、その上で自分たちの学校独自のよりよいものにしていってください」とお話がありました。
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