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校務の情報化推進セミナー2014 仙台会場 セミナーレポート
2014年10月18日(土)宮城県仙台市・TKP仙台西口ビジネスセンターにおいて「校務の情報化推進セミナー」が開催されました。県内外から41名の先生方の参加がありました。
趣旨説明
講師
堀田龍也(東北大学大学院情報科学研究科 教授)
校務の情報化の目的は、業務の軽減・効率化と、より本質的には教育活動の質の改善、学校経営の改善です。校務支援システムでは、様々なエビデンスが統合され、それが学校経営にも非常に役にたちます。本セミナーでは、その理念を校務支援システムの操作体験や分科会で、具体的な事例として理解していただきたいと思います。
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操作体験
進行
鈴木真理(スズキ教育ソフト株式会社 インストラクター)
受講者が2人1組となって、校務支援システム〈スズキ校務シリーズ〉の操作体験を行いました。

分科会
分科会は、3つのコースに分かれて行いました。講師が事例を発表し、グループで感想の共有や全体での話し合いをして進められました。
コースA 小学校での活用
講師
新保元康(北海道札幌市立幌西小学校 校長)
ICTを導入したあと、仕事の流れを変える・少しアイディアを足すことで、質の高い学校経営ができると思います。校務支援システムの導入に合わせて、健康観察の仕事の流れを工夫し、管理職も詳しい情報が把握できるようにしました。その結果、実際に感染症で臨時休校するような事態になっても、スムーズな対応ができました。通知表も、ICTの強みを活かして写真を入れたり、保護者に渡しきりのクリアファイル形式のものにしたところ、成長が分かりやすい・散逸しにくいといった点で保護者の方に喜んでいただけました。
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講師
江口浩文(佐賀県佐賀市立西与賀小学校 校長)
校務を行う上で、デジタルでできることは思い切ってデジタルにしていきましょう。その一方でアナログでしかできない学校経営や子どもとの対話はきちんとやっていく必要があります。校長が計画性をもって校務の情報化を進めていくことが大切です。保護者や教職員の、校務の情報化への不安を払拭するために、それぞれが納得できるような説明をしたり、仕組みをつくっていくことが、校長の役割だと思います。
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講師
塩津昭弘(熊本県熊本市立画図小学校 校長)
管理職の先生がリーダーシップを発揮し、校務を情報化する良さについて教職員に実感させる取り組みをすることが大事です。まずは、通知表の電子化をすることが、校務の情報化の突破口になると思います。教職員の校務のスキルがアップすれば、ICTの授業活用力や情報モラルの指導力向上にもつながります。また、学校の情報をホームページで発信することによって地域からの協力を得やすくなり、学校全体の活性化にもつながると考えます。
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コースB 中学校での活用
講師
金俊次(山形県米沢市立東部小学校 校長)
校務支援システムの導入の利点ですが、中学校ではなんといっても成績処理から通知表作成です。転記作業が格段に少なくなり、間違いが起こりにくくなります。また、管理職の点検も間違い探しから、校務支援システムの機能を使うことによって成績の質に着目出来るようになりました。通知表に記載する情報は学期の折々に入力が済んでいるので、通知表作成にかける時間が大幅に減ります。その分、通知表の記載内容や信頼性の向上に力を入れることが出来るようになりました。
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講師
新谷裕幸(福岡県柳川市立豊原小学校 校長)
校務支援システムを導入するときに課題となるのが、公文書規定についてです。まず実証をして、周囲にはたらきかけるというのが効果的です。1年目に、校務支援システムで作成した出席簿が公簿として認められるようにし、2年目に、市教委から通知表の実践研究校に指定され、3年目以降に、市のすべての学校にシステム導入…といったように、市としての段階的な導入につなげることができました。
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講師
延堂雅弘(岡山県岡山市立旭竜小学校 校長)
中学校では、教科ごとに特定があり、自分のやり方をお持ちの先生も多いと思います。スムーズな校務支援システムの導入のためには、先生方に「何のために校務支援システムを導入するのか」という意識づけをすることが大切です。校務支援システムの導入を機として、校務のやり方を見直し、共有して使える部分を見つけていくことで効率化をはかることができます。また、メーカーと行政が連携し、システムの保守や研修を行っていくとよいです。
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コースC 教育委員会としての導入
講師
山本朋弘(熊本県教育庁教育政策課 指導主事)
子どもたちの情報に関わる部分や、成績や名簿といった部分をうまく管理することで先生方のゆとりを生み出したい、それによって子どもたちの学力の向上につなげたいというのが、校務支援システム導入の目的です。校務支援システムの導入をどのようにし、その後の運用・研修をどのようにすすめるか、そこに学校現場の意見をどのように反映させるかということが課題になってくるかと思います。
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講師
高橋伸明(岡山県笠岡市教育委員会学校教育課 参事)
ニーズに合った校務支援システムを導入するためには、仕様書の作成段階から調整をしていく必要があります。また、導入した学校で適正に活用されるようにするために、専門のインストラクターによる研修会開催もセットで契約しておくとよいと思います。それ以外にも現場の要望や成果を調査し、メーカー側に改良の希望を伝えるといったことも必要だと思います。
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講師
片山淳一(岡山県赤磐市立山陽東小学校 指導教諭)
校務の情報化の研修の内容としては、準備段階や導入段階に合わせて行っていくことが必要だと思います。校務の情報化の本来の目的の理解、推進する上での課題や計画の協議、校務支援システムの操作体験などを行い、校務の情報化の必要性をしっかりと体感していただくようにしています。情報担当の先生向け、管理職の先生向けといったように、対象となる先生に合わせた研修を行うとよいと思います。
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総括講演
講師
堀田龍也(東北大学大学院情報科学研究科 教授)
校務の情報化は、情報化自体が目的ではなく、教育活動の充実が目的です。教育活動の充実とは、教員が雑務から解放され、子どもと向き合う時間が確保されるということと、評価データの蓄積と共有による質の高い指導の実現のことを言います。
校務支援システムを使っている先生のほうが、その有効性をより強く感じている、とする調査が、校務情報化支援検討会でなされていますが、先生が汎用の表計算ソフトで作ったシステムでは、セキュリティのことなども含め、いろいろ問題があります。校務支援システムは、全国各地のノウハウが集約されており、導入によって全国の良いところを取り入れられると言えます。また、単にテストの集計をするだけでなく、毎日の子どもの評価が縦断的に時系列に蓄積され、それを基に評価できます。学校の役割は、テストの成績云々より、子どもたちを全人格的に育てることで、それを通知表にどのように表して、子どもたちや保護者に返していくかが大事です。
教師というのは、子どもたちの人間的な成長を見守って体や心の発育に心を配る専門職です。校務支援システムというのは、その専門職を助けるシステムです。専門職を助けす環境整備だという観点から導入していただきたいと思います。